『ピアニシモ』千穐楽 感想

『ピアニシモ』、千穐楽お疲れさまでした。

前回同様、「感想」という通り私が感じて想ったことをつらつらと書いてるので解釈違いが大いに発生するかと思います。お気をつけください。

※原作未読です。

 

アフタートークまで観て幸せな3日間だったなぁという気持ちに包まれながら寝てしまった。

 

今回のオリジナルのキャスティングでの物語の雰囲気は観ていてやっぱり辛くて苦しくて、終わった後にこの”物語の世界に引っ張られて戻ってこれない感覚”が強くて。でも嫌いじゃない。

 

冒頭の全キャストが出てくるシーン、modulation ver.は透とヒカルが見つめ合っていたのに今回は逆にお互い反対の方向を向いていて。それだけでやっぱり違う!ってなった。昨日の今日だからmodulation ver.との違いがわかりやすくて良かったな。

 

moduration ver.の感想で 

村井さんの透と米原さんのヒカルの関係性はヒカルは自由にやってるけどあくまで主体なのは透。透は透として立ってはいる状態。

って書いて。これは今回もそのとおりだったなと思ったけど、今回はヒカルに対しての依存度が増してたような気がした。ヒカルに対してというよりヒカルとサキに対しての依存度が初演より高くなってたように思えた。保健室のシーンでヒカルが居ないことに気づいたときの透の取り乱し方とか、サキが電話に出なくてやっとつながったときの透がサキに問い詰めるところとかが初演よりも大げさだった気がする。やっぱり村井さんの透は精神がギリギリのところで生きていて、依存先を増やすことによってなんとか壊れずにいようとしていたのかなぁ。

 

マッチングアプリを観てる透のあまり感情のなさそうな顔で画面をスワイプしていくところがめっちゃ最近の若者感があってめっちゃ良かったな…… こういう人いるよな、って透というキャラクターを身近に感じられた。スマートフォンをもっている動作初演であったっけ……?もう初演の細かいところを覚えていない…… 初演よりもわかりやすく身振り手振りをつけていたように思えた。乳母車を押すときの透の手とか、この一件の後に「雨だ」って徹が空を見るところとか。

そもそも舞台とか朗読劇って映像と違ってセットが限られているから、観る側の想像力に頼らざるを得ない場面がたくさん出てくると思うんだけど(今回のようなものは特に)、村井さんって視線の誘導とかで見る側の想像力を助けることが上手なのかなって思った。創り手側、演者側が見せようとしている情景をなるべく正しく(という表現が正しいかはわからないが)届くような配慮に長けていのかな、と。

 

セブンイレブンでのシーン以降での透のなんとなく目の焦点があってない感じ。レンガでサトルを殴ってたときとか完全に目がイッてた感じ。殴ってる音含めてちょっと怖かった。この千穐楽で殴ってるときに「グシャッ」って音があることに気づいて。昨日あったっけこんな音!?と思いながら観てた。いろはすを潰して出る音だとは……全く思いつかなかった。そこがちょっとリアルでね、怖かった。

 

サキが全部ウソだと話すシーン。modulation ver.では全部ウソということが嘘な感じの喋り方だったけど、配役が元に戻ってまたサキも戻るのかなと思ってたら想像してたよりも性格が最悪の女だったな!?

「信じてたの?」の温度のなさにその瞬間息が吸えなくなったもんな…… サトルを殴ってた透も怖かったけどそれよりもこっちのほうが怖かった。本当に怖かった……

 

その後のヒカルに消えてくれという透も観ていて辛かった…… 自分の力じゃ壊せない鎖をむりやりちぎろうとして、手が血だらけになってもそれでもやめないような。そんな雰囲気で消えてくれと言ってる透が本当に観ていて辛かったんよ…… 最後のヒカルのエコーも相まってしんどかった。ヒカルが消えた後の透の本当に消えちゃったの?って少し呆然としたような表情もな、良かったな。

アフタートークでヒカルのセリフのエコーは偶然の産物だって言ってて本当に驚いた。てっきり演出だと思っていたので…… あんなにタイミングよくハウリングすることあるのか!? アーカイブでもそのままだといいな。偶然とはいえあの演出はよりセリフの切なさが増して好きだった。

 

初演は衝撃がすごかったのか、しんどさを受け止めきれなくてボロボロに泣きながら観てたんだけど、それ以外は割と受け止められて冷静に見られる部分もあった。でもやっぱり登場人物の感情に引っ張られる部分はたくさんあって。2回目以降の話の流れを知っていてもダレずに観続けられる作品ってやっぱり素晴らしい作品だからだろうなって思った。何を語っとんねんという話ですが……

 

村井さんがカーテンコールで「この作品を観て、明日の活力になれば……」みたいなことを言われていて(細かい言葉遣いをすべて忘れてしまったためニュアンスでお願いします)。

このコロナ禍で舞台とかライブとかイベントとか全部全部無くなっちゃって、これのために頑張ろう!とかそういった日常を頑張るためのちょっとしたゴール地点みたいなものが無くなってなんとなく生きることに慣れ始めてしまった私に現場という楽しさを思い出させてくれたなぁって思った。初演の感想でも言ったような気がするけど、始まる前にちょっとしたBGMとか本番前になんとなく集中モードに入るための環境があって、前説があって、本番がある。っていう一連の流れが観ているのが家だとしても現場だったな、って思えて。私にとっての現場ってさっきも書いたとおり日常を頑張るためのちょっとしたゴール地点なんだなって再認識した。前もって設定しておくご褒美も正解かも。

やっぱり本音を言うと会場の空気感とかも含めて好きだから生で観られたらそれが一番なんだけどね。でもこういった形も悪くないなって思った。より演劇が日常に溶け込んだ感じがして、身近に感じられて良いなって思った。

本当に楽しかったなぁ3日間。本当に楽しかった。久しぶりの感覚だった。

アーカイブも楽しみ。